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Japanische Klassiker mit Furigana

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ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (ななこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.271 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

おとよはひとりでにっこり笑って、きっぱり自分だけの料簡を定めて省作に手紙を送ったのである。

省作はもとより異存のありようがない、返事は簡単であった。

深田にいられないのもおとよさんゆえだ。家に帰って活き返ったのもおとよさんゆえだ。もう毛のさきほども自分に迷いはない。命の総てをおとよさんに任せる。

こういう場合に意志の交換だけで、日を送っていられるくらいならば、交換したことばは偽りに相違ない。抑えられた火が再び燃えたった時は、勢い前に倍するのが常だ。

そのきさらぎの望月の頃に死にたいとだれかの歌がある。これは十一日の晩の、しかも月の幽かな夜ふけである。おとよはわが家の裏庭の倉の庇に洗濯をやっている。

こんな夜ふけになぜ洗濯をするかというに、風呂の流し水は何かのわけで、洗い物がよく落ちる、それに新たに湯を沸かす手数と、薪の倹約とができるので、田舎のたまかな家ではよくやる事だ。この夜おとよは下心あって自分から風呂もたててしまいの湯の洗濯にかこつけ、省作を待つのである。

おとよが家の大体をいうと、北を表に県道を前にした屋敷構えである。南の裏庭広く、物置きや板倉が縦に母屋に続いて、短冊形に長めな地なりだ。