Japanische Klassiker mit Furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme
舟子は、縞もめんのカルサンをはいて、大黒ずきんをかぶったかわいい老爺である。
ちょっとずきんをはずし、にこにこ笑って予におじぎをした。四方の山々にとっぷりと霧がかかって、うさぎの毛のさきを動かすほどな風もない。重みのあるような、ねばりのあるような黒ずんだ水面に舟足をえがいて、舟は広みへでた。キィーキィーと櫓の音がする。
ふりかえってみると、いまでた予の宿の周囲がじつにおもしろい。黒石でつつまれた高みの上に、りっぱな赤松が四、五本森をなして、黄葉した櫟がほどよくそれにまじわっている。東側は神社と寺との木立ちにつづいて冬のはじめとはいえ、色づいた木の葉が散らずにあるので、いっそう景色がひきたって見える。
「じいさん、ここから見ると舟津はじつにえい景色だね!」
「ヘイ、お富士山はあれ、あっこに秦皮の森があります。ちょうどあっこらにめいます。ヘイ。こっから東の方角でございます。ヘイ。あの村木立ちでございます。ヘイ、そのさきに寺がめいます、森の上からお堂の屋根がめいましょう。法華のお寺でございます。あっこはもう勝山でござります、ヘイ」
「じいさん、どうだろう雨にはなるまいか」