Japanische Klassiker mit Furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme
て食事をしている杜松の顔のなかにも、なにかそれと通じあうものがあるようで、滋子は、愁いに似た、やるせないほどの愛情で胸をつまらせた。
膳がひかれて、薄茶が出ると、安は茶碗を手に持ったまま、杜松のほうへ向きかえて、
「みょうなことをおたずねするようですが、お母さま、昭和十二年の暮ごろ、マルセーユへおいでになったことはございませんでしたか」
杜松は指を折ってかぞえながら、
「昭和十二年といいますと、千九百三十七年のことですわね……ええ、よくおぼえていますわ。十二月の二十七日の朝、マルセーユまで、お出迎えしなければならない方がおいでになったともうしまして」
「巴里から?」
「あたくしどもは、仏蘭西と伊太利の国境のそばにあるサン・レモというところに住んでおりましたんです……それで?」
「ちょうど、日本から着いたばかりのところを、あなたさまと瓜二つのお美しい方に、いろいろとお世話をいただきましたが、すると、やはり、あなたさまのお母さまでいらしたのですね。お名前を伺うのを忘れて、きょうまでお礼をもうしあげることもできませんでしたが、その後、お母さま、ごきげんよくっていらっしゃいますか」