Japanische Klassiker mit Furigana
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のはぎ
野萩
久生 十蘭
Lesen Sie 野萩 (のはぎ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.480 Zeichen · 21 Bildschirme
「伊作は、もう日本へ帰って来ないだろうと、ずっと前から覚悟していたのよ」
と、だしぬけに、そんなことをいいだした。
「へえ、どうして」
「どうしてってことはないけど、そんな気がしたの。だから、帰ってきたなんていわれても、ほんとうのような気がしないのよ」
「帰るも帰らないもあるもんですか、否応なしよ……二十年近くも欧羅巴でしたい放題なことをして、四十二にもなって、追いかえされて来るなんて……あなた、土耳古のアンカラへ赴任なすった千田公使、ごぞんじでしょう?」
「書記官でいらしたころ、よくお見えになったよ」
「ついこの間、聞いたんですけど、千田さん、ホームシックにかかって……日本へ帰りたい帰りたいで、神経衰弱になって、ご夫婦でピストル自殺をなすったんですってよ」
「あの千田さんが、ご夫婦で……それはお気の毒だったわねえ」
「なにしろ、任地がアンカラでしょう。そうまでなさるには、どんなにお辛かったろうと思って、つくづくお察ししたわ。そんな方もあるのに、伊作なんか、帰ってきたって、欧羅巴のほうばかり眺めながら、腑ぬけのようになって暮すんでしょう。帰らないですむなら、あんなひと、帰って来ないほうがいいんだわ……あなた、やはり逢いたい?」