Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
鮭色の娘は、右手を彼の腕に巻きつけながら、踊ってちょうだい、といった。久我は優しくその肩に手を置きながら、葵というひとに、友達からのことづてがあってきたのだが、もしここにいるなら逢いたいものだ、といった。
娘は、まじめな顔をつくりながら、
「あら、そんな方、ここにおりませんわ。(すぐ自分で笑いだして)うそよ。……葵さん、いま階下にいるのよ。よんで来たげましょうね。……そのかわり、あとで、あたしと踊ってちょうだい」
気軽に立ちあがると、階下へ駆けおりていった。
葵があがって来た。ホールの入口に立って、奥のほうを見まわしている。酒場台のほうからくる琥珀色の光が、ほとんど子供じみた彼女の横顔を浮きあがらせていた。脆そうな首筋、白い芥子のようなうすい皮膚。二十三でいて、そのくせ子供のようにも見える、あの不思議な典型的な「東京の女」の顔であった。
久我を見つけると、葵は瞬間立ち竦んだようになって、それから、あまり劇しく身動きすると幻が消えてしまうとでも思っているように、そろそろと用心深い足どりで近づいてきた。
「……まあ、……でも、よく……あたし……」
顔をかがやかせ、感動のために口もろくにきけない風であった。