Japanische Klassiker mit Furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Lesen Sie 金狼 (きんろう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.438 Zeichen · 179 Bildschirme
「でもね、葵は朝まで部屋にいたんですよ。……葵が帰ると、かならず差配の娘が起きて玄関をしめることになっている。……あの晩も、玄関をしめてから、五分ばかり立ち話をして、それから二人が寝にいった」
「窓に非常梯子がついている」
那須は、やりきれない、という風に苦笑しながら、
「そいつあ下らない。……若い女が、夜半に非常梯子をおりて、新宿から深川までゆき、人を殺してきて、またそこから部屋へはいる。……これを、だれの眼にもかからずに、始めからしまいまでやってのける。……やってやれないことはなさそうだ……が、まず、ほとんど絶対に不可能だ……。可能内に於ける不可能の部分……。日常生活内における虚数だ。……安全率が微小すぎて、実用に耐えんのですな。嘘だと思ったら実験してごらんなさい。あなたの窓にも非常梯子がついてるでしょう」
「できる」
「午前二時頃……」
「そうだ」
「おやおや、実験ずみとは知らなかった」
「実験したとは言ってやしない。しかし、実験して見せてもいい。これはね、一人の人間を二つに割って使えばわけなくできる。……不可能内に於ける可能の部分さ……たとえば……」
横あいから、一人が、頓狂な声で口をはさんだ。