Japanische Klassiker mit Furigana
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きんぎょりょうらん
金魚撩乱
岡本 かの子
Lesen Sie 金魚撩乱 (きんぎょりょうらん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.999 Zeichen · 67 Bildschirme
深く蒼味がかった真佐子の尻下りの大きい眼に当惑以外の敵意も反抗も、少しも見えなかった。涙の出るまで真佐子は刺し込まれる言葉の棘尖の苦痛を魂に浸み込ましているという瞳の据え方だった。やがて真佐子の顔の痙攣が激しくなって月の出のように真珠色の涙が下瞼から湧いた。真佐子は袂を顔へ当てて、くるりとうしろを向く。歳にしては大柄な背中が声もなく波打った。復一は身体中に熱く籠っている少年期の性の不如意が一度に吸い散らされた感じがした。代って舌鼓うちたいほどの甘い哀愁が復一の胸を充した。復一はそれ以上の意志もないのに大人の真似をして、
「ちっと女らしくなれ。お転婆!」
と怒鳴った。
それでも、真佐子はよほど金魚が好きと見えて、復一にいじめられることはじきにけろりと忘れたように金魚買いには続けて来た。両親のいる家へ真佐子が来たときは復一は真佐子をいじめなかった。代りに素気なく横を向いて口笛を吹いている。
ある夕方。春であった。真佐子の方から手ぶらで珍らしく復一の家の外を散歩しに来ていた。復一は素早く見付けて、いつもの通り真佐子を苛めつけた。そして甘い哀愁に充たされながらいつもの通り、「ちっと女らしくなれ」