Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.251 Zeichen · 39 Bildschirme
紋之助を見つけた藤吉の眼が、やさしく微笑した。
「竹久の師匠じゃあごわせんか。」
おこよが、びっくり振り向いて、
「あら、ほんとに――。」
「どうもとんだことで――お役目御苦労に存じます。」
慇懃に藤吉へ挨拶して、幾分迷惑そうに、紋之助老人は、前へ出た。
藤吉が、
「ねえ、師匠、障子に影だけ見えて、それで、肝腎の人はいなかったというんで――この、二方口の廊下の、いってえどこへ消えたもんでげわしょうのう。」
「なあるほど。奇怪なこともあればあるもので――。」
「それより、首っ玉に紐を巻かれながら、どうして武右衛門さんは、相手を掴みつぶしてしまわなかったか――それが不思議でならねえ。」
「いや、まったく、ね。」
「なにしろ、あの力でがしょう――。」
「あの力だ――。」
「手が、届かなかったのかな。」
独りごとのように言って、藤吉は、高座の上り口の蝋燭を、じいっと見つめていた。
紋之助は、首を捻っただけで、答えなかった。
八
「親分さん、もう死体を取り片づけても、ようがすかね。」
男衆の藤吉が、訊きに来ても、藤吉は黙って、蝋燭の灯を見つづけながら、かすかにうなずいたきりだった。