Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.625 Zeichen · 26 Bildschirme
葬式彦が囁いた。藤吉は笑った。
「まあさ、待ちねえってことよ。」
二
八州屋孫右衛門は雨に濡れた衣服のまま頭部をめちゃめちゃに叩き毀されて、丑寅を枕に、味噌蔵の入口に倒れていた。赤黒い血糊が二筋三筋糸を引いたように土間を汚しているだけで、激しく争ったと思われる節はあたりのどこにも見られなかった。毛の付いた皮肌、饂飩のような脳髄、人参みたいな肉の片などがそこら中に飛び散って、元結で巻いた髷の根が屍骸の手の先に転がっていたりした。よほど強力の者が、何か重い鋭い刃物でただ一撃に息を絶やしたものらしいことは、目明し藤吉をまたなくても、誰にでも容易に想像された。それほど惨憺たる光景を呈していた。
蔵の前に、勘次を立番に残して、藤吉と彦兵衛は泥足のまま屍体の傍へ上り込んだ。その足許にある一足の高足駄、彦兵衛は早くもそれへ眼をつけた。
「親分。」
「うん、合わしてみろ。」
彦兵衛は足駄を持って出て行った。藤吉はしゃがんだ。独言がその口を洩れた。
「雨の中を帰って来たか――三時は経ったな。」
そして頭部の大傷にはたいした注意も払わずに、仰向加減に延びた仏の頸に、藤吉はじっと、瞳を凝らした。