Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.998 Zeichen · 32 Bildschirme
酒は強い方だったが、山下の軍鶏屋で二、三の卸さきの番頭たちと、空腹へだらしなく流し込んだので送り出された時にはもういい加減に廻っていた。俗にいう梯子という酒癖で、留めるのも諾かず途中暖簾とさえ見れば潜ったものだから、十軒店近くで同伴と別れ、そこらまで送って行こうというのを喧嘩するように振り切って、水溜りに取られまいと千鳥脚を踏み締めながら、ただひとり住吉町を玄冶店へ切れて長谷川町へ出るころには、通行人が振り返って見るほどへべれけに酔い痴れていた。素人家並みに小店が混っているとはいうものの、右に水野や林播磨の邸町が続いているので、宵の口とは言いながら、明るいうちにも妙に白けた静けさが、そこらあたりを不気味に押し包んでいた。鼻唄まじりに、それでも頭だけはやがて来るであろう大掛りな儲け話をあれかこれかと思いめぐらして、伝二郎は生酔いの本性違わずひたすら家路を急いでいた。優しい跫音が背後から近づいて来たのも、かれはちゃんと知っていた。縮緬のお高祖頭巾を眼深に冠って小豆色の被布を裾長に着た御殿風のお女中だった。二、三間も追い抜いたかと思うと、何思ったか引き返して来た。