Japanische Klassiker mit Furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lesen Sie 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.598 Zeichen · 26 Bildschirme
何のたしにもなるまいが小耳に挾んで来た、藤吉より一足先に帰宅っていた彦兵衛は、こう言って伸びをした。
ふんと鼻で笑った藤吉、そうかとも言わずに退屈そうな手枕、深々と炬燵に潜って、やがて鬱気もなげな高鼾が洩れるばかり――。
「お、親分え、大事だ。勘弁ならねえ。」
路地の中途から呶鳴って、勘弁勘次が毬のように転げ込んで来たのは、それから一時ほど後だった。
お糸のあとを慕った勘次、岡崎町の桔梗屋を出で、堀長門から素袍橋、采女の馬場へかかったかと思うと、西尾隠岐中屋敷へ近い木挽町三丁目のある路地口の素人家、これへお糸がはいるのを見届けてからさり気なく前を通ると、お糸の声で、
「婆や、あの人は?」
と言うのが聞えた。すると内部から障子が開いて、白髪の老婆が首を出し、
「あら、お糸さま、昨夜お会いなすったばかりなのに、ほほほほ――あの人が今ごろここにおいでなさるもんですかねえ。まあ、お上りなさいましよ。」
訳識り顔の挨拶だ。
往き過ぎた勘次、四、五軒向うの八里半丸焼きの店へ寄って訊いてみると、老婆の名はおりき、若いころから永らく桔梗屋に奉公していたお糸の乳母だとある。