Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎんさんじゅうまい

銀三十枚

国枝 史郎

Lesen Sie 銀三十枚 (ぎんさんじゅうまい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.863 Zeichen · 73 Bildschirme

Aozora Bunko

それからしばらく世間話をして、私は博士の邸を辞した。

私には一つの疑問があった。

「すくなくも彼女はユダだけは、本物の白金だということを、心得ていて売ったのかしら? それとも偶然その貨幣を……」

「そんな事はどうでもいい」と私はすぐに打ち消した。

「一切過ぎ去ったことではないか。どうあろうと関係はない」

下宿生活が不便になった。

「郊外へ小さな家でも借り、自炊生活でもやることにしよう」

私は借家を探し出した。

児玉町の方へ行って見て、旧居の前へ差しかかった。もう人が入っていた。これは当然なことであった。私には何となく懐しかった。しばらく佇んで見廻した。

「おや」と私は思わず云った。

表札に私の名が書かれてあった。私の文字で一條弘と。

「おかしいなあ、どうしたんだろう?」

格子の内側に障子があり、障子には硝子が嵌め込んであった。ちょっと不作法とは思ったが、家の中を覗いて見た。

「おや」と私はまた云った。

見覚えのある長火鉢の横に、見覚えのある一人の女が、寂しそうにちんまりとかしこまり、縫物をしているではないか。人の気勢を感じたのであろう、女はフッと顔を上げた。