Japanische Klassiker mit Furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme
こう思って来て紋太郎はゾッとばかりに身顫いしたが、
「いやいや治まれるこの御世にめったにそんな事のある訳はない。その証拠には町奉行和泉守様のご様子が酷く悠長を極わめておられる」
その時、和泉守が囁いた。
「藪氏、藪氏、こちらへござれ」
裏門の方へ歩いて行く。
裏門まで来て驚いたのは、さっきまで闇に埋ずもれていた高塀の内側が朦朧と光に照らされていることで、その仄かな光の色が鬼火といおうか幽霊火といおうか、ちょうど夏草の茂みの中へ蝋燭の火を点したような妖気を含んだ青色であるのが特に物凄く思われた。
「梯子を掛けい」
と和泉守が、与力の一人へ囁いた。
「はっ」というと神谷というのがつかつかと前へ進んだが、手に持っていた一筋の縄を颯と投げると音もなくタラタラと高塀へ梯子が掛かる。いうまでもなく縄梯子だ。
「よし」というと和泉守はその縄梯子へ手をかけたが、身を浮かばせてツルツルと上がる。
しばらく邸内を窺ったが、やがて地上へ下り立つと、
「藪氏、ちょっとご覧なされ、面白いものが見られます」
「は、しかし拙者など。……」
「私が許す。ご覧なさるがよい」
「それはそれは有難いことで。