Japanische Klassiker mit Furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme
涙の顔を袖で抑えお米は甚内の膝の上へとんと体を投げかけたが、とたんに襖が断りもなくスルリと外から開けられた。
五
「誰だ!」
と甚内が振り返る。
「声も掛けず開けましたはとんだ私の不調法、真っ平ご免くださいますよう」
こう云いながら坐ったのは、甚内よりも十歳ほど更けた四十五、六の立派な人物、赧ら顔でデップリと肥え、広袖姿がよく似合う。
「ま、お前はご主人さん。それでは妾は座を外し」
「うん、そうさな、では少しの間、座を外して貰おうか」
「はい」と云って出て行くお米、主人庄司甚右衛門はスルスルと前へ膝行ったが、
「客人、いやさ勾坂甚内、大泥棒にも似合わねえドジな真似をするじゃねえか」
両手を袖へ引っ込ませると、バラバラと落ちて来た小判幾片。甚内が蒔いたさっきの小判だ。
「黒田様の刻印が打ち込んであるのが解らねえか」
「え?」
と甚内は今さら驚きムズと小判をひっ掴んだ。いかにも刻印が押してある。
「むう」と唸るばかりである。
「なんと一言もあるまいがな。さあ早く仕度をするがいい。大門口は出られめえ。家の裏木戸を開けて進ぜる」
「そう急き立てるところを見ると、さてはもう手が廻ったか!」