Japanische Klassiker mit Furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme
宇治の牛丸と申すのは馬飼吉備彦の変名じゃわい」
「うへえ!」
と取り次ぎの山吹丸はそれを聞くと大仰に眼を丸くしたが、
「馬飼吉備彦と申しますれば本邦第一の物持ち長者と、かよう聞き及んでおりましたが……」
「その長者の吉備彦じゃわい」
「それに致してはその風態があまりに粗末にござります」
「ほほう、どのような風態かな?」
「木綿のゴツゴツの布子を着……」
「恐らくそれは結城紬であろう」
まさか藤原氏の全盛時代には結城紬などはなかった筈。
それはとにかく吉備彦は館の奥へ通された。それお菓子、それお茶よ。それも掻い撫での茶菓ではない。鶴屋八幡の煎餅に藤村の羊羹というのだからプロの口などへははいりそうもない。
ややあって信輔があらわれた。
「よう見えられたの吉備彦殿」
「これはこれはご前様。ご多忙中にもかかわらず、お目通りお許しくだされまして、有難い仕合わせに存じます」
――とにかくこういう意味のことを吉備彦はいったに相違ない。昔の会話はむずかしい。それを今に写そうとしても滅多に出来るものではない。武士は武士、公卿は公卿、ちゃアんと差別があった筈だ。それをいちいち使い分けて原稿紙の上へ現わそうとするには、一年や二年の研究では出来ぬ。