Japanische Klassiker mit Furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme
だんだんこっちへ近寄って来る。「貧乏神などと馬鹿にしてもさすがは神と名が付くだけに飛天隠形自在と見える」
学問はあっても昔の人だけに、紋太郎には迷信があった。で忽然姿を消した貧乏神の放れ業が不思議にも神秘にも思われるのであった。
若い二人の旅の男女は、紋太郎にちょっと会釈しながら静かにその前を通り過ぎようとした。
ふと女を見た紋太郎は、
「おや」といってまた眼を見張った。
その時プ――ッと寒い風が真っ向から二人へ吹き付けて来た。女の髪がパラパラと乱れる。手を上げて掻き除けたその拍子にツルリと袖が腕を辷り、露出した白い二の腕一杯桜の刺青がほってある。
「やっぱりそうだ。小間使いのお菊!」
呻くがように紋太郎は云う。と、女は眼を辷らせ紋太郎の顔を流瞥したが、別に何んともいわなかった。とはいえどうやら微笑したらしい。しかしそれも一瞬の間で二人はズンズン行き過ぎた。そうして今は雀色に暮れた夕霧の中へ消え込んでしまった。
「重ね重ね不思議のことじゃ。貧乏神に小間使いのお菊! 腕に桜の刺青があった。専斎殿の言葉通りじゃ。しかし美しいあのお菊がよもや六歌仙など盗みはすまい」