Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
「若様、大丈夫でございますよ、そんなこと」
と云ってまだオッホホホホと笑って居る。彼の年まは一番笑いこけながら、
「ネーやっぱり私が目が有ったでございましょう、でもよく今までもちこたえて居らっしゃったこと」
なんかと云ってひやかして居た。光君は気が狂ったように笑ったりふさぎ込んだりして夜を明してしまった。
翌日はまた春に有りがちなしとしと雨が銀線を匂やかな黒土の上におちて居た。落ちた桜の花弁はその雨にポタポタとよごされて居る。
光君は椽に坐って肩まで髪をたれた童達が着物のよごれるのを忘れてこまかい雨の中を散った花びらをひろっては並べならべてはひろって細い絹の五色の糸でこれをつないで環をつくって首にかけたり、かざして見たりして居るのを何も彼も忘れたように見とれて居た。気のきいた子が一番念入りに作ってあげた環を光君は、はなされないように自分の前にならべて置いていろいろのことを書きつけてそれにむすびつけて居た。その中には、
花散ればまぢりて飛びぬ我心 得も忘れ得ぬ君のかたへに
悲しめる心と目とをとぢながら なほうらがなし花の散る中
かなしめばかなしむまゝにくれて行く 春の日長のうらめしきかな