Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
紅はこんなことも思って見た。
「若様は正気がなくっていらっしゃる。思いきって、思いきって、思ってるたけを申し上げてしまったって、御なおりになってからは御存じないんだから」
けれ共今までながい間の年月包んでけにもさとらせなかった辛抱を今ここにすっかりぶちまけてしまうことはあんまりあっけなく残念にも思って居た。
気の狂った光君、この人をそうっと思って居る紅、只乳母と云う名のために心配して居るもの、朝から晩までつききりについて居る紅をうらやむ女達、斯うしたいろいろの人達をつつんだ西の対は読経の声と絃の音と溜息の声につつまれて一日一日とたって行くので有った。とうとう悲しみの中に五月雨は来てしまった。じくじくと雨の人々の涙のように降る日も、きまぐれにカラットしたお天気になった時も、光君はうす明りの部屋の中に美くしい日化粧の姿をよこたえたりして、紫の君の人形をしっかりとかかえて美くしいうわことを云いながら只淋しい秋の来るのをまって居るばかりで有った。
(十四)
五月雨が晴れると急に夏めいてようやく北にあるこの館にもむしあつい風は吹くようになった。