Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
やっぱり。もうずっと前三時ほど前にここの前で細い御声で何か歌を御うたいでございましたが、やがて高い御声で御笑いなさりながらどちらへか御いでになったのでございますよ、マア、それからどちらへ御こしになったかはわかりませんですが」
「そうでございましたか、オオ、どこへいらっしゃったのでございましょう。実はさきほどから一寸二人ともとろりといたしましたらもうどこへか御出になってしまったのでございますもの」
紅は礼を云うのも忘れて東の対にかけもどると、殿も母君も外の人達も御おきになってくらやみの中におどろきとかなしみとにとらわれて立って居る。
「わかりましてす」
紅はたったそれだけ云ったきりで座ってしまって何も云えない。
「どうなすったの、早くおっしゃいよ」
外の女達はすすめるけれ共息ははずむ、自分の罪はせめられる。
「只今紫の君様の御部屋にうかがいましたらもう三時も前にあの御部屋の前で悲しいうたを御うたいでしたが、高笑いを急にあそばしてどこへか行って御しまいあそばしたと云うことで……」
紅はうっつぷしたまんま斯う答えた。
「エ? 紫の君の部屋に行ったって? どうしたんだろう」