Japanische Klassiker mit Furigana
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ろくおんしゅう
録音集
豊島 与志雄
Lesen Sie 録音集 (ろくおんしゅう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.262 Zeichen · 7 Bildschirme
そうなると、もう停止するところを知らず、平常でも、肺に出入する空気の音は固より、心臓の鼓動まで聞えてくる。云わば、常に自分の身体各部に聴診器をあててじっときき入ってるのと、全く同じ状態になってしまった。
彼はそれを神経衰弱のせいだとし、幻覚妄聴のせいだとしようとして、ひどく努力した。然し耳を自分の身体内部からそらすことが出来ず、呼吸と血の循環との規則的な音に、胃腸の蠕動の不規則な音が交錯して、その騒音に始終神経を刺激され、睡眠もよくとれないのだった。身体の内部は、暴風と激流と震動とのみで、いささかの静安もないのだ、と彼は云う。
そして彼は遂に発狂した。
思うに、彼の聴覚は触覚をもまきこみ、更にあらゆる内部感覚をもないまぜて、体内に大騒音を拵えだしたのであろうが、そうした騒音を記録出来ないものであろうか。
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隣室の私語はひどく神経を刺戟するものであるが、それよりも、襖一重の隣室で、ペンの音を立て、原稿紙の音をさせるのは、更に神経を刺戟するものだとは、某氏の言である。
支那には、隣室の紙声枕に通って転々すと、表現の妙を極めた卑猥な文句があるが、全然精神的な意味に於て、隣室のペンと原稿紙との音が枕に通って眠られないとは、如何にもありそうなことである。