Japanische Klassiker mit Furigana
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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 鍵 (かぎ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.182 Zeichen · 200 Bildschirme
妻ハ日記ヲツケテイタノダ」と云い、「数日前ニウスウス気ガ付イタ」と云っているけれども、実際はよほど前からハッキリと知っており、かつ内容を盗み読みしていたものと思う。私もまた、「自分が日記をつけていることを夫に感づかれるようなヘマはやらない」―――「私のように心を他人に語らない者は、せめて自分自身に向って語って聞かせる必要がある」―――などと云っているのは、真赤なである。私は夫に、私には内証で読んで貰うことを欲していた。「自分自身に向って聞かせ」たかったことも事実であるが、夫にも読ませることを目的の一つとして書いていた。では何のために音のしない雁皮紙を使ったり、セロファンテープで封をしたりしたかといえば、用もないのにそういう秘密主義を取るのが生来の趣味であったのだ、というよりほかはない。この秘密主義は、私のことをそう云って嗤う夫にしても同様であった。夫も私も、互いに盗み読まれることは分っていながら、途中にいくつもの堰を設け、障壁を作って、できるだけ廻りくどくする、そして、相手が果して標的へ到達したかどうかを曖昧にする、それが私たちの趣味であった。私が面倒な手数を厭わずセロファンテープ等を使ったのは、自分だけでなく、夫の趣味に迎合するためでもあった。