Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

「いや、熊の皮なんぞはいらない、いらない。おれ達は江戸へ帰れば、虎の皮をふんどしにしているのだ。」

「はは、鬼じゃあるまいに……。」と、男は笑った。「そんな冗談を言わないで、一枚おみやげに買ってください。だんだん暖かくなると毛皮も売れなくなる。今のうち廉く売ります。」

「廉くっても高くっても断る。」と、梅次郎も口を出した。「わたしらは町人だ。熊の皮の敷皮にも坐れまいじゃないか。そんな物はお武家を見かけて売ることだ。」

揃いも揃って剣もほろろに断られたが、そんなことには慣れているらしい男は、やはりにやにやと笑っていた。

「それじゃあ仕方がない。熊の皮が御不用ならば、熊の胆を買ってください。これは薬だから、どなたにもお役に立ちます。道中の邪魔にもならない。どうぞ買ってください。」

「道中でうっかり熊の胆などを買うと、偽物をつかまされるということだ。そんな物もまあ御免だ。」と、義助はまた断った。

「偽物を売るような私じゃあない。そこはここの婆さんも証人だ。まあ、見てください。」

男はうしろを見かえると、桜のかげからまたひとりが出て来た。それは年ごろ十七八の色白の娘で、手には小さい箱のようなものを抱えていた。