Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

勿論それは七兵衛夫婦の内相談だけで、まだ誰にも口外したわけではなかったが、お此のほうにはその下ごころがあるので、きょう尋ねて来た甥を愛想よく迎えた。

梅次郎は奥へ通されて、庭の若葉を眺めながら言った。

「よく降りますね。叔父さんは……。」

「叔父さんは商売の用で、新宿のお屋敷まで……。」

「お元ッちゃんは……。」

「お国を連れて赤坂まで……。」と、言いかけてお此は声をひくめた。「ねえ、梅ちゃん。すこしお前に訊きたいことがあるのだが……。お前、木曾街道からお元と一緒に帰って来る途中で、なにか変ったことでもなかったかえ。」

「いいえ。」

それぎりで、話はすこし途切れたが、やがて梅次郎のほうから探るように訊きかえした。

「叔母さん、なにか見ましたか。」

お此はぎょっとした。それでもかれは素知らぬ顔で答えた。

「いいえ。」

話はまた途切れた。庭の若葉にそそぐ雨の音もひとしきり止んだ。この時、梅次郎は何を見たか、小声に力をこめてお此を呼んだ。

「叔母さん。あ、あれ……。」

彼が指さす縁側には、一匹の灰色の小鼠が迷うように走り廻っていたが、忽ち庭さきに飛びおりて姿を消した。