Japanische Klassiker mit Furigana
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かがみのなかのつき
鏡の中の月
宮本 百合子
Lesen Sie 鏡の中の月 (かがみのなかのつき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.290 Zeichen · 15 Bildschirme
大きく腕をうごかして、瀧子が出した団扇で煽いだとき、上衣をぬいだワイシャツの脇から背が風で白くふくらんだ。率直と闊達、それを山口は補習学校でも評判のいい女教師である瀧子に対して自分のとりえとして示すのであった。
「突然あがったりして、無礼な男だとお思いになりませんかとも思ったんですが、僕としては、溝口ゆき子さんがあなたにお話し下さるにしても、どうもそれを待ってばっかりいずに、直接お会いして気持を分って頂く方がいいと思ったもんですから――つまりマア、言ってみれば、僕は年からいっても分のわるい求婚者といった立場ですからな」
十日ばかり前のある晩、瀧子がひとり暮している二間の小さい家の夾竹桃の咲いている縁先にこの辺では珍しい白服にパナマ帽、竹のステッキをついた山口が訪ねて来た。妹が結婚して大陸へ行くまで瀧子は隣村に勤めていた。その時分、公の席では町の有力者の一人として間接に見かけたことも度々ある山口は、ゆっくりと内ポケットから名刺ばさみをとりだし、狭谷町青年学校主事、狭谷町醇風会理事、その他二つ三つ肩書を刷りこんだ名刺を瀧子に渡した。そして、ともかく縁端に花筵の夏坐蒲団を出して怪訝そうに応待しはじめた瀧子に、山口は結婚を申込んだのであった。