Japanische Klassiker mit Furigana
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くにさだえがく
鏡花短篇集 川村二郎編
泉 鏡花
Lesen Sie 鏡花短篇集 川村二郎編 (くにさだえがく) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.644 Zeichen · 40 Bildschirme
「あれはの、二股坂の庄屋殿じゃ。」といった。
この二股坂と言うのは、山奥で、可怪い伝説が少くない。それを越すと隣国への近路ながら、人界との境を隔つ、自然のお関所のように土地の人は思うのである。
この辺からは、峰の松に遮られるから、その姿は見えぬ。最っと乾の位置で、町端の方へ退ると、近山の背後に海がありそうな雲を隔てて、山の形が歴然と見える。……
汽車が通じてから、はじめて帰ったので、停車場を出た所の、故郷は、と一目見ると、石を置いた屋根より、赤く塗った柱より、先ずその山を見て、暫時茫然として彳んだのは、つい二、三日前の事であった。
腕車を雇って、さして行く従姉の町より、真先に、
「あの山は?」
「二股じゃ。」と車夫が答えた。――織次は、この国に育ったが、用のない町端まで、小児の時には行かなかったので、唯名に聞いた、五月晴の空も、暗い、その山。
三
その時は何んの心もなく、件の二股を仰いだが、此処に来て、昔の小屋の前を通ると、あの、蜘蛛大名が庄屋をすると、可怪しく胸に響くのであった。
まだ、その蜘蛛大名の一座に、胴の太い、脚の短い、芋虫が髪を結って、緋の腰布を捲いたような侏儒の婦が、三人ばかりいた。