Japanische Klassiker mit Furigana
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に、さんば――じゅうに、さんば
鏡花短篇集
泉 鏡花
Lesen Sie 鏡花短篇集 (に、さんば――じゅうに、さんば) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.305 Zeichen · 66 Bildschirme
……
何となく心に浮んだは、ああ、向うの山から、月影に見ても色の紅な花を採って来て、それを母親の髪に挿したら、きっと病気が復るに違いないと言う事です。また母は、その花を簪にしても似合うくらい若かったですな。」
高坂は旧来た方を顧みたが、草の外には何もない、一歩前へ花売の女、如何にも身に染みて聞くように、俯向いて行くのであった。
「そして確に、それが薬師のお告であると信じたですね。
さあ思い立っては矢も楯も堪らない、渡り懸けた橋を取って返して、堤防伝いに川上へ。
後でまた渡を越えなければならない路ですがね、橋から見ると山の位置は月の入る方へ傾いて、かえって此処から言うと、対岸の行留りの雲の上らしく見えますから、小児心に取って返したのが丁ど幸と、橋から渡場まで行く間の、あの、岩淵の岩は、人を隔てる医王山の一の砦と言っても可い。戸室の石山の麓が直に流に迫る処で、累り合った岩石だから、路は其処で切れるですものね。
岩淵をこちらに見て、大方跣足でいたでしょう、すたすた五里も十里も辿った意で、正午頃に着いたのが、鳴子の渡。」
四
「馬士にも、荷担夫にも、畑打つ人にも、三人二人ぐらいずつ、村一つ越しては川沿の堤防へ出るごとに逢ったですが、皆唯立停って、じろじろ見送ったばかり、言葉を懸ける者はなかったです。