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Japanische Klassiker mit Furigana

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に、さんば――じゅうに、さんば

鏡花短篇集

泉 鏡花

Lesen Sie 鏡花短篇集 (に、さんば――じゅうに、さんば) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.305 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

ふと、心付くと消えたように女の姿が見えないのは、草が深くなった所為であった。

丈より高い茅萱を潜って、肩で掻分け、頭で避けつつ、見えない人に、物言い懸ける術もないので、高坂は御経を取って押戴き、

山川険谷  幽邃所生  卉木薬艸  大小諸樹

百穀苗稼  甘庶葡萄  雨之所潤  無不豊足

乾地普洽  薬木並茂  其雲所出  一味之水

葎の中に日が射して、経巻に、蒼く月かと思う草の影が映ったが、見つつ進む内に、ちらちらと紅来り、黄来り、紫去り、白過ぎて、蝶の戯るる風情して、偈に斑々と印したのは、はや咲交る四季の花。

忽然として天開け、身は雲に包まれて、妙なる薫袖を蔽い、唯見ると堆き雪の如く、真白き中に紅ちらめき、瞶むる瞳に緑映じて、颯と分れて、一つ一つ、花片となり、葉となって、美女ヶ原の花は高坂の袂に匂ひ、胸に咲いた。

花売は籠を下して、立休ろうていた。笠を脱いで、襟脚長く玉を伸べて、瑩沢なる黒髪を高く結んだのに、何時の間にか一輪の小な花を簪していた、褄はずれ、袂の端、大輪の菊の色白き中に佇んで、高坂を待って、莞爾と笑む、美しく気高き面ざし、威ある瞳に屹と射られて、今物語った人とも覚えず、はっと思うと学生は、既に身を忘れ、名を忘れて、唯九ツばかりの稚児になった思いであった。