Japanische Klassiker mit Furigana
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ながやてんいちぼう
長屋天一坊
山本 周五郎
Lesen Sie 長屋天一坊 (ながやてんいちぼう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.453 Zeichen · 57 Bildschirme
戸数は実は三十八軒ある。が、初めは六軒だったので、付近住民の怠慢と無関心によっていつまでも「六軒長屋」と呼ばれているわけらしい。家主は繩屋吾助、女房おたきとのあいだにわきという娘が一人いた。
吾助は下野の佐野という土地の産であって、故郷において二三の職業に失敗、三十一歳のおり江戸へ出て繩屋を開業した。以来約二十年、夫婦娘、三者一体となって業務に精励した結果六軒長屋を端のほうから一軒ずつ買ってゆき、自分は表通りへ店を構え、なお長屋を順次――古材木を買い溜めては――増築に増築して、以て今日の大を成すに至ったものである。
長屋の住人たちは、かれらの家主に対して好意的ではなかった。かれらは蔭では吾助を「禿」と呼び、女房おたきを「ごうつく」と呼び、娘おわきをば「臼」とも「色けち」とも呼んでいた。仇名としては没趣味な知恵のないものである。吾助は禿頭であったし、おたきはごうつくそのものであった。娘を臼というのはもちろん彼女の腰部をさすので、これも実に俗なありふれた表現である。また色けちというのはこれはさらに俗な、些かも曲のない或る意味を表わしていた。
おわきはもう二十六になる。