Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ながさきのいんしょう
長崎の印象
宮本 百合子
Lesen Sie 長崎の印象 (ながさきのいんしょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.996 Zeichen · 28 Bildschirme
城山へは、宿の横手の裏峡道から、物ずきに草樹を掻き分け攀じ登ったのだから、洋服のYは泰然、私はひどく汗を掻いた。つい目の先に桜島を泛べ、もうっと暑気で立ちこめた薄靄の下に漣一つ立てずとろりと輝いていた湾江、広々と真直であった城下の街路。人間もからりと心地よく、深い好意を感じたが、思い出すと、微に喉の渇いたような、熔りつけられた感覚が附随して甦って来る。そこを立って来た夜半に、計らず聴いた雨の音故一きわすがすがしく、しめやかに感じたということもあろう。鳥栖で、午前六時、長崎線に乗換る時には、歩廊を歩いている横顔にしぶきを受ける程の霧雨であった。車室は、極めて空いている。一体、九州も、東海岸をずーっと南に降る線、および鹿児島から北に昇って長崎へ行く列車など、実に閑散なものだ。窓硝子に雨の滴のついた車室にいるのは、私共と、大学生一人、遠くはなれて官吏らしい男が二人乗り合わせているぎり。海岸に沿うて、汽車は山腹を潜っては出、潜っては出、出た時にやや荒れ模様の海の景色が右手に眺められる。私共は、今日雨降りで却ってよかったと思った。南風崎、大村、諫早と通過する浜の黒々と濡れた磯の巖、灰色を帯びた藍にさわめいている波の襞、舫った舟の檣が幾本となく細雨に揺れながら林立している有様、古い版画のような趣で忘られない印象を受け