Japanische Klassiker mit Furigana
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かのように
阿部一族・舞姫
Lesen Sie 阿部一族・舞姫 (かのように) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.875 Zeichen · 141 Bildschirme
手には飼桶を持っている。主人に会釈をして、勝手口に置いてある麦箱の蓋を開けて、麦を飼桶に入れている。石田は暫く立って見ている。
「いくら食うか。」
「ええ。これで三杯ぐらいが丁度宜しいので。」
別当はぎょろっとした目で、横に主人を見て、麦箱の中に抛り込んである、縁の虧けた轆轤細工の飯鉢を取って見せる。石田は黙って背中を向けて、縁側のほうへ引き返した。
花壇の処まで帰った頃に、牝鶏が一羽けたたましい鳴声をして足元に駈けて来た。それと一しょに妙な声が聞えた。まるで聒々児の鳴くようにやかましい女の声である。石田が声の方角を見ると、花壇の向うの畠を為切った、南隣の生垣の上から顔を出している四十くらいの女がいる。下太りのかぼちゃのように黄いろい顔で頭のてっぺんには、油固めの小さい丸髷が載っている。これが声の主である。
何か盛んにしゃべっている。石田は誰に言っているかと思って、自分の周囲を見廻したが、別に誰もいない。石田の感ずる所では、自分に言っているとは思われない。しかし自分に聞せる為めに言っているらしい。日曜日で自分の内にいるのを候っていてしゃべり出したかと思われる。