Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
Lesen Sie 陰獣 (いんじゅう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.968 Zeichen · 131 Bildschirme
多くの債権者を持つ君の父親は、何人にもその行先を知らせないで、姿をくらましてしまった。私はいつ君に逢えることか分らなんだ。だが、私は長い一生を考えた。一生の間君に逢わないで済もうとはどうしても考えられなかった。
私は貧乏だった。食う為に働かねばならぬ身の上だった。一つはそれが、あくまで君の行衛を尋ね廻ることを妨げたのだ。一年二年、月日は矢の様に過ぎ去って行ったが、私はいつまでも貧困と戦わねばならなかった。そして、その疲労が、忘れるともなく君への恨みを忘れさせた。私は食うことで夢中だったのだ。だが、三年ばかり前、私に予期せぬ好運が巡って来た。私はあらゆる職業に失敗して、失望のどん底にある時、うさはらしに一篇の小説を書いた。それが機縁となって、私は小説で飯の食える身分となったのだ。君は今でも小説を読んでいるのだから、多分大江春泥という探偵小説家を知っているだろう。彼はもう一年ばかり何も書かないけれど、世間の人は恐らく彼の名前を忘れてはいない。その大江春泥こそかく云う私なのだ。君は、私が小説家としての虚名に夢中になって、君に対する恨みを忘れてしまったとでも思うのか。