Japanische Klassiker mit Furigana
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ようきなきゃく
陽気な客
山本 周五郎
Lesen Sie 陽気な客 (ようきなきゃく) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.086 Zeichen · 46 Bildschirme
――あの特別演出のあった日から半月くらいは静穏な時が経過したろう。おれは精勤であることだけは守ったから依然として八時半には出社したが、しばしば社長室からあの稀有な声音のもれるのを聞いた。おれはまだおれの年齢としては無知であったが、それでもその声音ないし音声がかれら夫妻の平和状態を示すのだということだけは察しがつくようになっていた。……云ってみれば、社長はそのちょび髭と秘密文書による蘊蓄をもっぱら妻君に提供したものだろう。が、社長には社長でまたそこに計画があったものさ。これもまたあとからわかったことなんだが、彼は次期の市会議員選挙にうって出るという野心をもちはじめていた。それでこれに要する事前運動のための軍資金を、その貧欲酷薄な妻君からひきだそうと計ったわけらしい。……それについては彼は自分のちょび髭と秘密な蘊蓄とに莫大な自信をもっていた、ことにその妻君の嗜好に関しては隅の隅まで熟知していたから、その効果にはかなりな程度まで安心していたふうだった。
――人間がいつも自分自身によって欺かれ自分自身によって失策するということは悲しいことだと思う。社長は自分の技倆を些かも疑わなかった、そこには確信さえもっていた。