Japanische Klassiker mit Furigana
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ざっとう
雑沓
宮本 百合子
Lesen Sie 雑沓 (ざっとう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.832 Zeichen · 50 Bildschirme
それは宏子に初耳であった。
「そうお?」
「そうだってことだわ。川原さん、あすこの家から通学しているんですもの、それでいてなかなかあのひとやってるでしょう?」
門の外まで喋りながら宏子は登誉子を送って出た。バスを待っていると、西寮の舎監が、着流しに帯つきの姿で、四五人の予科の生徒と一緒に出て来た。かたまってバスを待っていて、
「よく気をつけて行ってらっしゃいね」
と繰返し云っている。
宏子は部屋へ戻った。同室の三輪が、衣裳箪笥の内側についている鏡を上目で見ながら、湯上りのしめった髪に丁寧なわけ目をつけていた。
「――お風呂へ入るならいそがなけゃ駄目よ」
「ありがとう、いいわ。家で入って来たから」
三輪は隅から桃色フェルトの上靴を出して穿きかえた。そうした上でもう一遍鏡の中の自分を振かえってそこを閉めると、机のところへ来て腰かけた。ずーっと腰をずらして、頭を低くかけ、
「ねえ、加賀山さん、わたし憂鬱になっちゃった!」
持ち前のすこし鼻にかかる声で云った。
「ふーん、また?」
「またってなにさ」
「だってあなたって人は朝昼晩と憂鬱がっているんだもの……」
室内に点されたばかりの灯の色が、窓硝子に美しく映って見える時刻であった。