Japanische Klassiker mit Furigana
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ざっき(いち)
雑記(Ⅰ)
寺田 寅彦
Lesen Sie 雑記(Ⅰ) (ざっき(いち)) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.568 Zeichen · 33 Bildschirme
それで手許にはそれだけ鋏の入ったのが残っていた訳である。そうとも知らず次に乗車した時にうっかり切符を渡すとこれは鋏が入っていますよと注意されてはなはだきまりの悪い思いをしたそうである。その時の車掌は事柄を全くビジネスとして取扱ったからまだよかったが、隣に坐っていた人が妙にニヤニヤしていたという事である。
この場合も全然乗客の方の不注意であって車掌に対しては一言の云い分もない。
電気局から鋏穴の検査を励行するように命令し奨励するとすれば、車掌がこれを遂行するのは当然の事である。そして車掌の人柄により乗客の種類によりそこに色々の場面が出現するのは当然の事である。
私は自分の落度を度外視して忠実な車掌を責めるような気もなければ、電気局に不平を持ち込もうというような考えももとよりない。
しかしこの自身のつまらぬ失敗は他人の参考になるかもしれない、少なくも私のように切符の鋏穴をいじって拡げるような悪い癖のある人には参考になる。同時にまた電気局や車掌達にとっても、そういう厄介な癖を持った乗客が存在するという事実を知らせるだけの役には立つと思う。
ついでながら、切り立ての鋏穴の縁辺は截然として角立っているが、揉んで拡がった穴の周囲は毛端立ってぼやけあるいは捲くれて、多少の手垢や脂汗に汚れている。