Japanische Klassiker mit Furigana
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あめあがる
雨あがる
山本 周五郎
Lesen Sie 雨あがる (あめあがる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.794 Zeichen · 43 Bildschirme
だがその遠慮さえつい忘れるときが来た。峠の上へ出て、幕でも切って落したように、眼の下にとつぜん隣国の山野がうちひらけ、爽やかな風が吹きあげて来ると、彼はぱっと顔を輝かして、「やあやあ」と叫びだした。
「やあこれは、これはすばらしい、ごらんよあれを、なんて美しい眺めだろう」
「まあ本当に、本当にきれいですこと」
「どうです、躯じゅうが勇みたちますね、ええ」
彼はまるい顔をにこにこと崩し、少年のように活き活きとした光りでその眼をいっぱいにした。早くもその眺望のなかに、新しい生活と新しい希望を空想し始めたとみえる。
「ねえ元気をだして下さい、元気になりましょう」
妻に向って熱心にそう云った。
「――あそこに見えるのは十万五千石の城下ですよ、土地は繁昌で有名だし、なにしろ十万五千石ですからね、ひとつこんどこそ、と云ってもいいと思うんだが、元気をだしてゆきましょう」
「わたくし元気ですわ」
おたよは明るく笑って、劬るように良人を見上げながら、巧みに彼の口まねをした。
「と云ってもいいと思いますわ」