Japanische Klassiker mit Furigana
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あめあがる
雨あがる
山本 周五郎
Lesen Sie 雨あがる (あめあがる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.794 Zeichen · 43 Bildschirme
伊兵衛は眼を細くして笑い、呆れている同宿者たちに向って云った。
「みなさん済みませんが手を貸して下さい、なが雨の縁起直しにみんなでひと口やりましょう、少しばかりで恥ずかしいんですが、どうか手分けをして、私も飯ぐらい炊きますから、手料理ということでやろうじゃありませんか」
同宿者たちのあいだに、喜びとも苦しみとも判別のつかない、嘆息のような声が起こった。すぐには誰も動かなかった、だが伊兵衛が菓子を出してみせ、源さん(桶のタガ直しをする)の子供が、その母親の膝からとびあがるのと共に、四五人いっしょに立ちあがって来た。
宿の中は急に活気で揺れあがった。なにかがわっと溢れだしたようであった。宿の主人夫婦と中年の女中も仲間にはいって、魚や野菜がひろげられ、炉にも釜戸にも火が焚かれた。元気のいい叫びや笑い声が絶え間なしに起こり、女たちは必要もないのにきゃあきゃあ云ったり、人の背中を叩いたりした。
「旦那はどうか坐ってお呉んなさい」
みんなは伊兵衛に云った。
「――こっちはわたし共でやりますから、頂いたうえにそんなことまでおさせ申しちゃあ済みません」
支度が出来たら呼ぶから、などと懇願するように云ったが、伊兵衛は一向に承知せず、ときどき妻のいる小部屋のほうをちらちら見やりながら、ぶきような動作でしきりに活躍した。