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Japanische Klassiker mit Furigana

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あめのやど

雨の宿

岩本 素白

Lesen Sie 雨の宿 (あめのやど) von 岩本 素白 (いわもとそはく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.050 Zeichen · 4 Bildschirme

Aozora Bunko

今まで此の土地へ来るたび、いつも天気でついぞ雨らしい雨に会ったことのない私は、すっかり雨というものを忘れて来たが、聞けば此の夏はまるで降らなかったという。これは悪くすると、滞在中ずっと降り通すかも知れない、然しその時には又その時のことと肚をきめると、雨の音は落ち着かぬ旅の心を和やかに静めてくれる。悪い癖で宿屋の褞袍を着ることの嫌いな私は、ほんの七八日の旅なのに、わざわざ鞄に入れて来た着物と着換えて、早目に床を延べてくれた奥の小間の唐紙を締め切り、入り口の方の部屋のまん中に小机を据えて端坐すると、少し強くなった雨の音が、明日の行程の悩みを想わせるよりも、ひどく静かな愉しいものに聞えて来る。一二冊は携えて来た本もあるが、さてそれに読み入るだけの余裕はなくて、落ち着いたようで居て、何か物に憧れるような焦立たしさを覚えるのも可笑しい。

近頃少し眠られぬ癖がつきかけて、これで旅に出てはと危ぶんで居たが、それにしても其の夜は割によく眠れたことである。暁に眼ざめてそれから程なく聞いた鐘の音は、ふだん東京で聞くものよりはやや澄んで高い音であった。目を瞑ったまま近くの寺々を思い浮べて見たが、さてどの辺とも分らない。