Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
一同は種彦の語った最前の話に百年の憂苦を一朝にして忘れ得た思い。酔月から取寄せた料理の重詰を開き川水に杯を洗いながら、頻に絶景々々と叫んでいたが、肝腎な種彦一人は大暑の日中を歩みつづけた老体につかれを覚えた故か、何となく言葉少く、片肱を舷に背を胴の間の横木に寄せかけたまま、簾越しに唯ぼんやり遠い川筋の景色にのみ目を移していた。
しかし船中の一人がふと種彦の様子を怪しんで、何処ぞ御気分でもと気を揉むものがあれば、種彦は忽ちわざとらしいまでに元気よく、杯を見事に呑干して、「いや、どうも年ばかりは取りたくないものさ。少し遠路でもいたすと直ぐにこの通りの始末で御座る。」といつもに変らぬ軽い調子で、「しかしまアわれらお互の身に取って今日ほど目出たい日はあるまいて。鶴屋さんが折角のお饗応だ。種員も仙果も遠慮なく頂戴致すがよいぞ。」といいながら、しかしどういう訳か一同の如く心の底から陶然と酔を催す様子は更に見えなかった。
種彦は先刻から遠山左衛門尉が事をばいかほど思うまいと力めて見てもどうしても思返さずにはいられなかったのである。顧れば十幾年前芝居町なぞで能く見た折の金四郎と今日の左衛門尉とを思い比べると実に不思議な心持になる。