Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
種員はつい去年の今頃までは待乳山の樹の茂りを向うに見て、崩れかかった土塀の中には昼間でも狐が鳴いているといわれた小出伊勢守様の御下屋敷が、瞬く中に女形の振袖なびく綺羅音楽の巷になったのかと思うと、この辺の土地をばよく知っている身には全く狐につままれたよりもなお更不思議な思がして、用もないのに小路々々の果までを飽きずに見歩いた後、やがて浅草随身門外の裏長屋に呑気な独世帯を張っている笠亭仙果の家へとやって来た。仙果は何処へか慌忙てて出て行こうとする出合頭朝帰りの種員を見るや否や、いきなりその胸倉を取って、「乃公ア今お前を捜しに行こうと思っていた処だ。気をたしかにしな。気をたしかにしな。」
「こう仙果さん。どうしたもんだな。お前こそ気でもちがったんじゃねえか。痛え痛え。まア放してくんな。懐中から大事な書きものがおっこちるぜ。」
「気をたしかにしなせえ。腰でも抜かさぬように用心したがいいぞ。堀田原の師匠がの、今朝おなくなりになったのだ。」
唖然としていう処を知らぬ種員に向って仙果は泣く泣く一伍一什を語り聞かせた。
柳亭種彦先生は昨夜の晩おそく突然北御町奉行所よりお調の筋があるにより今朝五ツ時までに通油町地本問屋鶴屋喜右衛門同道にて常磐橋の御白洲へ罷出よとの御達を受けた。