Japanische Klassiker mit Furigana
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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Lesen Sie 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.414 Zeichen · 289 Bildschirme
竜子は綺麗な鳥が綺麗な翼に嘴を埋めて、静に夜の明けるのを待っている形を思い浮べた。
竜子は岸山先生と母との関係についてはもう何事も考えまいと思った。電車の中で耳にした噂が根もない事であったら無論それに越した事はない。万一事実であったらそれは母の寂しい生涯に果敢ない一点の色彩を加えた物語として竜子は出来るかぎり美しい詩のように考えよう。この後不幸にしてこの噂が世間の人の口にいい伝えられるような事があっても、自分だけは母に対しては何事も知らないような顔をしていようと考えた。
そして竜子は母の方を向いて母と同じように行儀よく静に目をつぶった。けれどもすぐには眠られなかった。夢とも現ともなく竜子は去年の秋頃から通学する電車の中で毎朝見かける或学生の姿を思い浮べた。袂の中へいつの間にか入れられてあった艶書の文句を思出した。艶書は誰にも知られぬ間に縦横きれぎれに細かく引裂かれて江戸川の流に投げ棄てられたのである。竜子は意外な夢にわれから驚き覚めると、目の前にはすやすや眠っている母の顔がほのかに白く浮んでいる。しかし竜子は最早や最初のように驚異の情を以て母の寐顔を見はしなかった。