Japanische Klassiker mit Furigana
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くものこみち
雲の小径
久生 十蘭
Lesen Sie 雲の小径 (くものこみち) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.634 Zeichen · 33 Bildschirme
霊同士でひっぱたきあいなんかはじめたら、仲裁するのに骨が折れるから」
「それは、あなたのご自由よ。香世子の霊で思いだしたんだけど、香世子の霊を呼びだして、いったい、どんな話をするんです?」
「細かく言わなくっちゃ、いけないのか。隠しておきたいようなこともあるんだが」
「お二人のことだから、しなだれかかったり、しなだれたり、いろいろに手をつくすんでしょうけど、インチキ霊にひっかかって、いいくらいに欺されているんだったら、悲しいわね。そんなことはないの?」
「香世子の霊は香世子の霊。ほかの霊が出てくるわけはないから」
「眼の病気に、だんだん視野が狭くなるのがあるんですってね。ところで、当人は知らない。いま自分が見ているのが、完全な像だと思っている。そういう病気が現実にあるんです。ごぞんじだった?」
「知らないね。これでも眼は丈夫なほうだ」
柚子は、ぷすっとふくれていたが、そのうちに気をかえて、
「どうしてもあたしに言わせようというのなら、いってあげましょうか……クリスマス・イヴに、香世子はあなたを車に乗せて、どこかへぶっつけて、いっしょに死ぬつもりだったのよ。あの日の午後、メルセデスを持ってお宅へ行ったでしょう。