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Japanische Klassiker mit Furigana

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くものこみち

雲の小径

久生 十蘭

Lesen Sie 雲の小径 (くものこみち) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.634 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

といって、尻込みする気配を見せたら、敏感な霊はすぐ感じとって、機嫌を悪くするだろう。

白川は道のうえに枝をのばしている石楠の葉をむしりとって、手のなかで弄びながら、クヨクヨと考えつめていたが、荒神の滝をすぎて、截りたつような岩の上に奥ノ院の輪郭が見えだしてくると、急に気持が浮き浮きしてきて、ひさしぶりで香世子の霊に逢うということのほか、なにも頭に浮んでこなくなった。

宿房の庫裡めいたところへ行って、茨木の名をいうと、奥から茨木が小走りに出てきた。

「まあ、白川さんでしたの。こんなところへ、よくおいでくださいました。その後、ごきげんよろしくて」

と微笑を含んだ眼で、なつかしそうに白川を見あげた。

「どうしても、あなたでなくてはいけないわけがあって、東京からやってきました」

「それはどうも。ようこそ……汚れておりますが、どうぞ、おあがり遊ばして」

爐を切った八畳ほどの小間に白川を案内すると、

「わたくしは、お浄めをしてまいりますから、お先にお着きなさいまして」

といって、手洗いに立って行った。

間もなく戻ってきて、十分ほど闇のなかでしずまっていたが、ガバと身体を前に倒すと、もう香世子の霊が出てきた。