Japanische Klassiker mit Furigana
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うんもへん
雲母片
宮本 百合子
Lesen Sie 雲母片 (うんもへん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.525 Zeichen · 6 Bildschirme
筆を握ったが、先の方が変にくたくた他愛がなく、どんな風に動かしていいかわからない。正直にいえば、母が、どっちから、どう書き出したかも、余り珍しく熱心に気をとられているので判らない。
暫く躊躇した後、私は思い切って力を入れ、硯に近い右の方から、ぐっと棒を引いて先をはね、穂先もなおさず左側に向い合ってもう一本の棒を引いた。
ひどく力を入れた上に、墨がつきすぎていたので、見る間に紙ににじみ、折角書いたところは、一面真黒な墨のぬかるみになってしまった。――部屋にさす日の光はいよいよ明るい。母は、
「まあいやだ!」といって、楽しそうに笑った。
「どうしたの? これは字じゃあない。たどんじゃあないの。たどんやさん! さあ、もう一遍。今間違ったよ。そっちからではなく、こっちから。この棒の方から。さあ始めて」
半紙の下には、六つに仕切った罫の下敷があった。筆を握って瞬きもせずそのはっきりした四角な区切りを見つめていると、ひとりでに手が動いてどうしても右から先に落ちる。はっとする間もなく、私は次の一字も右側から先に書き出してしまった。
後から覗いていた母は、黙って、私の手を肩越しに掴んだ。