Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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らいほうとうものがたり

雷峯塔物語

田中 貢太郎

Lesen Sie 雷峯塔物語 (らいほうとうものがたり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.606 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「何もありません、まあお一つ、そうおっしゃらずに」

許宣は気のどくだと思ったが女の傍にいたくもあった。彼はまた坐って数杯の酒を飲んだ。

「これで失礼いたします、もうだいぶん遅くなったようですから」

許宣は遅くなったことに気が注いたので、思い切って帰ろうとした。

「もうお止めいたしますまいか、あまり何もありませんから、それでは、もう、ちょっとお待ちを願います。昨日拝借したお傘を、家の者が知らずに転貸をいたしましたから、すぐ取ってまいります、お手間は取らせませんから」

許宣はすぐ今日もらって往くよりは、置いていく方がまたここへ来る口実があっていいと思った。

「なに、傘はそんなに急ぎませんよ、また明日でも取りにあがりますから、今日でなくってもいいのです」

「では、明日、私の方からお宅へまでお届けいたしますから」

「いや、私があがります、店の方も隙ですから」

「では、お遊びにいらしてくださいまし、私は毎日相手がなくて困っておりますから」

「それでは明日でもあがります、どうも御馳走になりました」

許宣は白娘子に別れ、小婢に門口まで見送られて帰ってきたが、心はやはり白娘子の傍にいるようで、自分で自分を意識することができなかった。