Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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らいほうとうものがたり

雷峯塔物語

田中 貢太郎

Lesen Sie 雷峯塔物語 (らいほうとうものがたり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.606 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「そうですか、それは……、では、この傘を持っていらっしゃい、私はすぐそこですから、傘がなくってもいいのです」

許宣は自分の手にした傘を女に渡そうとしたが、女は手を出さなかった。

「ありがとうございますが、それではあんまりでございますから、もう婢がまいりましょうから」

「なに、いいのです、私は、もう、すぐそこですから、傘をさすほどのことはないのです、さあお持ちなさい、傘は私が明日でも取りにあがりますから」

「でも、あんまりですわ」

「なに、いいのです」

許宣は強いて柄を女の前へ持っていった。

「ではすみませんが、拝借いたしましょうか、私の家は荐橋の双茶坊でございます」

女は細そりした長い指を柄にからませた。

「そうですか、それではまたお眼にかかります」

許宣は女に気をもまさないようにと、傘を渡すなり簷下に添うてとかとかと歩きだした。それといっしょに女も簷下を離れて石を敷いた道の上へ出て往った。

許宣はその夜寝床に入ってからも白娘子のことを考えていた。綺麗な眼鼻立の鮮やかな女の姿が心ありそうにして此方を見ていた。彼は誘惑に満ちた女の詞を一つ一つ思いだしていた。物の気配がして寝室の帳を開けて入って来た者があった。