Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのこたえ
露の答
Lesen Sie 露の答 (つゆのこたえ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.237 Zeichen · 14 Bildschirme
妹の鼻の形は美しいですから。けれども整った美しさですから、唇のみずみずしさ妖しさに比べれば、永く注意を惹かなかったです。私は唇をみつめていました。あなたはこの世に無限の物を見たことがありますか。私は法隆寺を見物しました。千年の昔からつづき、そして之から何千年つづくか知れませんが、私は然し心を動かされませんでした。あれは無限ではないです。夢殿の観音も見ましたが、私はグロテスクだと思っただけです。私は妹の唇を見ているうちに心をうたれて、無限だと思ったのです。私は妹と一緒に死ぬのはいけないことだと思いました。私は泣いたです。一日中、寝たふりをして泣いていたです。泣くわけが分らなかったですが、涙が流れていつまでも涸れないので奇妙でした。一日一晩泣きあかしたです。そして死ぬのをやめました。けれども、その後も、今も、生きているのが面倒です。私は今でも時々妹の唇をぬすみ見しますが、見るたびに、段々と別のことを思うようになったです。もはや無限ではないのです。私には手のとどかない秘密があるのだと思ったです。妹は美しすぎます。私は妹を見ていると、十里四方もつづく満開の桜の森林があって、そのまんなかに私だけたった一人置きすてられてしまったような寂しさを感じます。