Japanische Klassiker mit Furigana
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あおきのしゅっきょう
青木の出京
菊池 寛
Lesen Sie 青木の出京 (あおきのしゅっきょう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.513 Zeichen · 43 Bildschirme
むろん、彼は意識して懸命に青木に近づいていった。彼の友人というよりも、彼の絶対的な崇拝者として、彼の従順なる忠僕としてであった。
青木と雄吉との交情が、何事もなく一年ばかり続いた頃であった。そこに、雄吉に対する大なる災難――それは青木に対してもやはり災難に相違なかった――が、萌芽し始めていた。
それは、たしか雄吉らが、高等学校の三年の二学期のことだったろう。赤煉瓦の古ぼけた教室の近くにある一株の橄欖が、小さい真っ赤な実を結んでいる頃であった。二、三日前から蒼白な顔を、いよいよ蒼白にして、雄吉が話しかけても、鼻であしらっていた青木が、とうとう堪らなくなったように、教室の壁に身を投げかけるようにしながら、
「さあ! いよいよ田舎へ帰るんだぞ!」と、吐き出すように叫んだ。それは、雄吉にとっては、まったく意外なことであった。雄吉は、自分の君主の身の上にでも、災難が襲いかかってきたかのように、狼狽しながら、
「君が国へ帰る? どうしてだ?」と、きいた。
「どうもしないさ。俺の親父が破産したというだけさ」と、青木は沈痛な、しかも冷静な調子でいった。
青木の家は、雄吉の知る限りでは、田舎のかなりの資産を持った商人らしかった。