Japanische Klassiker mit Furigana
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あおきのしゅっきょう
青木の出京
菊池 寛
Lesen Sie 青木の出京 (あおきのしゅっきょう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.513 Zeichen · 43 Bildschirme
といった。中学時代から、貧家に育った雄吉には、二十円というような大金をまとめて掴んだことは、そうたびたびある経験ではなかった。雄吉は、自分の尊敬する君主から、拝領物をでも戴いたように低頭せんばかりに、
「やあ、ありがとう」と、いいながらそれを押し戴くようにした。
八十円を懐にした青木は、線香花火のように燦やかな贅沢をやった。彼は、クラスの誰彼を、その頃有名に成りかけていた、鎧橋際のメイゾンコーノスへ引っ張って行って、札びらを切って御馳走した。そして、二晩も三晩も、寄宿舎へ泊るといって、近藤の家へは帰ってこなかった。
が、一週間と経ち、十日と経つうちに、青木はまた元のように慎ましい生活を強いられているようであった。それは、雄吉にとっては忘れられない四月の十一日の晩であった。晩餐を済すと、青木は「ちょっと散歩してくる」といって出ていったまま、なかなか帰って来なかった。雄吉はただ一人、春の宵にありがちな不思議な憂鬱に襲われて、ぼんやり机にもたれていると、後の襖が、音も無く開かれたと思うと、聞き馴れた小間使いの声がして、
「旦那様が、ちょっと御用です」と、いった。