Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんのかい
革鞄の怪
泉 鏡花
Lesen Sie 革鞄の怪 (かばんのかい) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.394 Zeichen · 21 Bildschirme
「鍵はありません。」
「ございませんと?……」
「鍵は棄てました。」
とぶるぶると胴震いをすると、翼を開いたように肩で掻縮めた腕組を衝と解いて、一度投出すごとくばたりと落した。その手で、挫ぐばかり確と膝頭を掴んで、呼吸が切れそうな咳を続けざまにしたが、決然としてすっくと立った。
「ちょっと御挨拶を申上げます、……同室の御婦人、紳士の方々も、失礼ながらお聞取を願いとうございます。私は、ここに隣席においでになる、窈窕たる淑女。」
彼は窈窕たる淑女と云った。
「この令嬢の袖を、袂をでございます。口へ挟みました旅行革鞄の持主であります。挟んだのは、諸君。」
とす目が空ざまに天井に上ずって、
「……申兼ねましたが私です。もっともはじめから、もくろんで致したのではありません。袂が革鞄の中に入っていたのは偶然であったのです。
退屈まぎれに見ておりました旅行案内を、もとへ突込んで、革鞄の口をかしりと啣えさせました時、フト柔かな、滑かな、ふっくりと美しいものを、きしりと縊って、引緊めたと思う手応がありました。
真白な薄の穂か、窓へ散込んだ錦葉の一葉、散際のまだ血も呼吸も通うのを、引挟んだのかと思ったのは事実であります。