Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme
小山嬢は、靴を手にぶら下げた。そして指をしきりに動かして、計数管と無電装置との間に連絡のあることを示したのち、靴をいじっていたが、靴のフックのところに突然赤い豆電球がついた。
すると、殆んど同時に、靴の底から熊手のようなものがとび出して、下に向って開いた。その恰好は、がんじきをつけた雪靴にどこか似ていた。その熊手様のものは、蟹のように爪をひろげ、びくびく慄えていたが、そのうちにその爪がだんだん内側へ曲って来て、遂には靴の下で何物かをがっちりと抱きしめたような恰好となった。
小山嬢は、そうなった靴をしきりにさしあげて、美貌の青年の注意を喚起している風に見えた。すると青年は感激の面持で、つと小山嬢の方に寄ると、靴もろとも両手でぐっと抱きしめた。青年の腕の下にある小山嬢の顔が、急に蒼くなり、それからこんどは赤くなった。彼女のしっかり閉じられた瞼の下に大きな眼玉がごろんと動くのが見えた。彼女は恍惚境に入っているらしい。
青年が腕を解いて小山嬢を離すと、彼女は靴を持ったまま傍の椅子の上へ、へたへたと崩れるように腰をおとし、しばらくは動こうともせず、口もきかなかった。